超音波検査室 >> 検査の進め方 >> 腫瘤性病変を見つけたとき
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  ひとつ明確にしておきたいことがあります。



 「腫瘤性病変って一体何ですか?」



 ある時、こんな基本的な事を実習生が私に質問してきました。
 「腫瘤性病変」を感覚的に理解しているだけの私は、その質問に明確な答えを出す事ができませんでした。  



 実習生に感覚的に答えて、なんとかごまかした私は、仕事が終わって実習生が帰ってから調べてみました。
 ( 俺も判らない、一緒に調べよう! と言えなかった自分が非常に恥ずかしく感じてしまいました )



 調べた結果、次の事がわかりました。 ( もちろん、次の日、実習生にも教えてあげました )



 腫瘤性病変とは、腫瘤(mass)と腫瘍(tumor)を合わせた総称だそうです。



 腫瘤(mass)とは、塊を成しているもの全てに対応する言葉です。
 例えば「嚢胞」。
 これは、もちろん腫瘍ではありません。 しかし、塊を成しており腫瘤です。



 腫瘍(tumor)には、塊を形成するものもあれば、びまん性に存在するものもあります。
 例えば乳癌の中の「非浸潤性乳管癌」。



 塊を成している腫瘤形成型の「非浸潤性乳管癌」もあれば、
 塊を成していない扁平低エコー型の「非浸潤性乳管癌」もあります。



 いずれも腫瘍ではありますが、腫瘤形成型は腫瘤ですが、扁平低エコー型は腫瘤ではありません。
 「胆嚢癌」でも有茎性に腫瘤を形成するタイプと、潰瘍のように浸潤し腫瘤を形成しないタイプがあります。



 さて、これらの病変を見つけたとき、どのような情報を超音波検査で画像に残すべきでしょう?
 もちろん、そのケースによってある程度の違いはあると思いますが
 基本的に、集めなければいけない情報はある程度共通しています。



 どこの検査をしていても検査中に「腫瘤性病変」を見つけたとき、その腫瘤性病変が何であるか?を探る為、
 どのような項目について、画像に情報として残していけば良いのか、ここでまとめていきたいと思います。






 腫瘤性病変の集めるべき基礎情報 
腫瘤性病変の大きさ
腫瘤性病変の内部エコー
腫瘤性病変の境界部エコー
腫瘤性病変の後方エコー
腫瘤性病変の側方エコー
腫瘤性病変の形状
腫瘤性病変内部の構成物
腫瘤性病変部の血流について
腫瘤性病変の弾性度について




 腫瘤性病変の大きさ  (size)

  まず、腫瘤性病変を見つけたとき最も基本となる情報で、その大きさを測ります。
  測り方は腫瘤性病変の「縦」「横」「深さ」の3方向で計測します。



  この場合の「縦」「横」「深さ」とは、身体を基本とした「縦」「横」「深さ」ではありません。
  超音波検査中に描出可能な範囲内で、その腫瘤性病変が一番大きく観察されるところを基準にします。



  腫瘤性病変が一番大きく観察される場所で、画像をフリーズしたら「横」「深さ」の計測をします。
  次に、腫瘤性病変が一番大きく観察される場所からプローブを90°回転させ「縦」を計測します。



  これは、胆嚢結石を計測している画像です。
  結石が一番大きく観察される画像(左画像)で、「横」「深さ」の計測をした後に、
  プローブを90°回転させて「縦」を計測します。

  この胆石の大きさは 「縦」「横」「深さ」= 11.78×17.19×12.89 cm となります。






 腫瘤性病変の内部エコー (internal echoes)


  腫瘤性病変の内部エコーは2つの事について考えます。
  その2つは「腫瘤性病変の内部エコーの均一性」と「腫瘤性病変内部エコーのエコーレベル」です。



  a、腫瘤性病変の内部エコーの均一性


  腫瘤内部を観察したとき、そのエコーは均一性で均一な場合と不均一な場合に分けられます。


内部エコー 均一 内部エコー不均一



  b、腫瘤性病変内部エコーのエコーレベル


  エコーレベルは無エコー、低エコー、等エコー、高エコー、に分けられて表現されます。
  等エコーとは、腫瘤の周囲の組織に対して等しいエコーレベルである、という意味です。


無エコー 低エコー 等エコー 高エコー
echo-free echo-poor ←→ echo-rich
anechoic hypoechoic isoechoic hyperechoic
low echo level ←→ high echo level






 腫瘤性病変の境界エコー  (boundary echoes)


  腫瘤性病変の境界については2段階で評価を行います。
  まず、腫瘤性病変とその境界部がはっきり認識できるかどうか、
  次いで、はっきり認識できる場合に、その辺縁部はどのような形状で描出されるかについて評価します。



境界不明瞭 境界明瞭
辺縁平滑
境界明瞭
辺縁不整








 腫瘤性病変の後方エコー  (posterior echoes)


  腫瘤の種類によってその後方エコーは変化します。
  後方エコーとは、プローブから見て腫瘤の後方(腫瘤よりも深い位置)でのエコーレベルの変化で
  腫瘤の後方と腫瘤の無い部分の後方を比較して評価します。



  つまり、後方エコーはその腫瘤性病変の超音波ビームの透過性が良い場合、後方エコーは増強し
  腫瘤性病変の超音波ビームの透過性が悪い場合、後方エコーは減衰します。



  超音波ビームが透過しやすいものとは、均一な構造を示す組織、または不均一でも粘液や液体は
  超音波ビームを透過しやすい。
  超音波ビームが透過しにくいものとは、結合組織の成分が多いものなどがあげられます。



  これを考慮して、その腫瘤性病変の組織が何であるかある程度の予想を立てることができます。


後方エコー増強 後方エコー不変 後方エコー減衰







 腫瘤性病変の側方エコー  (lateral shadow)


  腫瘤外側に観察される後方エコー減弱のことを側方エコーと呼びます。
  腫瘤性病変が腹腔内等の深い位置にある場合は観察しづらいが、表在等の浅い部分にある腫瘤などでは
  観察しやすい特徴を持っています。



  側方エコーは外側陰影とも呼ばれ、腫瘤辺縁が平滑な場合に超音波ビームが屈折した結果、
  側方部分の音波が欠損して観察されます。
  つまり、その腫瘤性病変が辺縁がマクロレベルで平滑かどうかという事がわかります。











 瘤性病変の形状  (shape)


  その腫瘤性病変自体の形状を評価します。
  大きく分けて、円形、類円形の病変、分葉形の病変、多角形の病変、不整形の病変に分けられます。



円形
類円形
分葉形 多角形 不整形







 腫瘤性病変の構成物


  一言で腫瘤性病変といっても、とても多くの種類が存在します。
  その中で、腫瘤内部や腫瘤の周囲に特徴的な構造物をもつ腫瘤性病変も存在します。
  その、特徴的な構造物が腫瘤性病変の内部に確認できれば、腫瘤性病変の鑑別診断に役立ちます。



   @ 腫瘤周囲エコー帯 (halo)


  腫瘤周囲エコー帯は、腫瘤性病変を囲むように存在する腫瘤とはエコーレベルの違う構造物です。
  腫瘤周囲に低エコーの帯のように観察される「腫瘤周囲低エコー帯」と
  腫瘤周囲に高エコーの帯のように観察される「腫瘤周囲高エコー帯」があります。



腫瘤周囲
低エコー帯
腫瘤周囲
高エコー帯






   A 石灰化  (calcification)


  石灰化は腫瘤の成長過程で壊死を起こした部分にできたり、良性疾患に伴ってできたり
  その背景は腫瘤性病変により異なりますが、
  いずれも、高エコーで描出されます。



  微細石灰化は超音波上では点状高エコーとして観察され、通常音響陰影を伴いません。
  微細石灰化が少数の場合と多数の場合を比べると、壊死した部分が多いと考えられ
  悪性病変をより強く疑う所見となります。



  また、良性疾患に伴ってできる石灰化はしばしば粗大化することがあり、石灰化の後方に音響陰影を伴います。



微細石灰化 微細石灰化
の散在
粗大石灰化







 腫瘤性病変部の血流について


  腫瘤性病変部の血流は、超音波ドップラー検査で知ることができます。



  超音波ドップラー検査とは、ドップラー効果を利用した体内で動きがあるものに対して色づけをして
  観察できる機能です。



  腫瘤性病変にドップラーを当てると、腫瘤を栄養している動脈や、腫瘤から排出される静脈が判るだけでなく
  その腫瘤性病変が血流を豊富に受け取っているかどうか、腫瘤に流入する血管の走行の特徴、
  血流の波形からその腫瘤の弾性度がどのくらいあるのか、などを知ることができます。



  また、逆に血流が認められないのが特徴の腫瘤性病変も存在します。



  超音波ドップラー検査については、別のページで詳しく紹介することにします。
  その評価法やドップラー検査から求められる具体的な数値はそこで解説します。



  ここでは、ドップラー検査でその腫瘤の特徴が得られる事がある、という事を理解していただきたいと思います。



   この画像は乳癌に対するドップラー画像です。
  腫瘤内に拍動性の血流が認められ、カラーや波形から腫瘤内の血流のいろいろな情報が得られています。




 腫瘤性病変部の弾性度について


   超音波検査では、リアルタイムで状態を観察できる特徴があることは説明しましたよね。



  その特徴を利用して、腫瘤をプローブで圧迫したり、手で触れるくらい表在に存在する腫瘤であれば
  実際に指で押したり、揉んだりしてその状況を超音波検査で観察することにより、
  その腫瘤の実際の弾性度を知ることができます。



  ただし、体表付近に存在する腫瘤や腹部でも体表に近い場所にある腫瘤性病変に対しては観察できても
  肝臓の深部側などのように、深い場所にある腫瘤性病変は弾性度を知ることはできません。



  乳腺の検査中には、弾性度を知るためによく指で挟んだままプローブで観察したりします。



  また、新しい技術として「エラストグラフィー」というのがあります。
  この技術は表在にあるものにしか、対応できませんが
  今まで感覚的に硬い、軟らかいを判断していたのに比べれば、定性的に評価でき、再現性もあります。



  「エラストグラフィー」はプローブで腫瘤性病変等を描出したまま、ゆっくりと圧迫したり、
  圧迫を緩めたりした時の組織の歪みの度合いをカラー表示で表現されます。
  その為、術者の圧迫の仕方により表示が変わってしまう事があります。



  また、まだ実際の症例数も少ないのでどのような症例に対して有効なのか、または有効でないのか
  はっきりしたデータがまだ無い状態です。



  これから、いろいろ有効な使い方が解明されてくるでしょうから、今後に期待の技術です。




  これは、実際の乳癌に対するエラストグラフィーの画像です。 



  左右の画面で全く同じBモードの画像が描出され、その左側の画像だけにカラー表示されています。
  どのように見るかは、ドップラー画像と似ている所があります。



  写真中央部にカラーバーが縦にうつっています。 赤側には「soft」、青側には「hard」の文字があります。
  そうです。単純に赤い所が軟らかいところで青い所が硬いところなのです。
  腫瘤性病変だけが青くて硬いことがわかり、腫瘤性病変周囲の組織は柔らかいことがわかると思います。








   最後に、

   この他にも、腫瘤の特徴や鑑別診断につなげられる情報はまだあります。
   ですが、このページでは基本的で代表的なことを、書いてみました。



   とはいっても、
   腫瘤性病変を見つけたとき、全ての腫瘤性病変に対して全ての情報を取るわけでもありません。
   それが何であるか、を知るために必要な情報は疾患によって違ってきますので、
   疾患の特徴を理解している事が重要になってきます。
   



   ま、先はまだまだ長いですが、ゆっくりじっくり行きましょう。



  しかし、まぁ、自分で書いておいてなんですが、よくこんなに長いページを読んでくださいました。 


   ここまで、きっちり読むと結構疲れたんじゃないですか? 私も書いていて疲れました(苦笑)。


  最後までお付き合いして頂いてありがとうございます。